原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO

アコーディオンの至宝、リシャール・ガリアーノが8年ぶりにブルーノート東京に戻ってきてくれました。これまでロン・カーターとのデュオ、アストル・ピアソラへのトリビュート、ディディエ・ロックウッド～ビレリ・ラグレーンとのトリオなどで印象的なステージを繰り広げてきたリシャールですが、今回は最新プロジェクト"ニューヨーク・タンゴ・トリオ"による登場。クリスマス・シーズンにふさわしい、なんともシックで心あたたまる公演が昨日から始まっています。

ベース奏者のディエゴ・インベルトはエンリコ・ピエラヌンツィ、ビレリ・ラグレーン、アンドレ・チェッカレリらと共演、ポップス歌手のフランソワーズ・アルディの作品にも参加しているベテラン。歯切れのよい音色、メロディアスなソロ、堅実なサポートの三拍子が揃ったプレイを味わわせてくれました。ギター奏者のアドリヤン・モアニャールは、ガッド・エルマレ（俳優、コメディアンとしても著名）やシリル・エーメのサポートを担当したことがあるほか、この2023年にはディエゴとのデュオ・アルバム『Django's Songs』も発表している気鋭です。リシャールは、このふたりの間に位置し、時に目をつぶりながら、時に笑顔を浮かべながら、ヴィクトリア社のボタン型アコーディオンから黄金のフレーズを紡ぎ出します。演奏曲目はアストル・ピアソラ作「Vuelvo Al Sur」に始まり、リシャールの代表的なオリジナル・ナンバーである「New York Tango」、「Spleen」、「Tango Pour Claude」、エリック・サティ作「Gnossienne No3」、再びピアソラ作の「Oblivion」等を含む、彼の美意識が大いに反映されたもの。加えて、中盤では可憐な吹奏楽器"アコーディーナ"に持ち替えて「Moon River」をしっとりと聴かせ、ラストではビング・クロスビー他が歌った名曲「White Christmas」を、実に洒脱な、"フレンチ・テイストの装いが施されたクリスマス・ソング"としかいいようのない解釈で届けてくれました。バラエティに富んだセットリストということでは、最新ライヴ・アルバム『Cully 2022』の上をゆく、と私は思います。

ほとんどの曲でトリオ全員のソロを聴くことができましたが、他のプレイヤーにスポットライトが当たっているときでも、リシャールは決して両手を休ませることがありません。粋なコード（和音）でサポートしたり、ロング・トーンでソリストに合いの手を入れたり、まさに自由自在。メロディ演奏家としての姿はもちろんのこと、コンピング（伴奏）の名手としてのリシャールが満喫できるのも、この公演の嬉しいところです。世界的巨匠のプレミアム公演はクリスマス当日、25日まで続きます。
(原田 2023 12.23)

Photo by Yuka Yamaji

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【LIVE INFORMATION】

Christmas Evening with RICHARD GALLIANO
NEW YORK TANGO TRIO featuring Adrien Moignard & Diego Imbert
2023 12.22 fri., 12.23 sat., 12.24 sun., 12.25 mon.　ブルーノート東京